英検の面接に向けて、ノートを読み返して勉強する方は多いと思います。これは自然なやり方です。読み返すと、忘れていたことを思い出せますし、あいまいだったところもはっきりします。

ただ、読み返すだけで終わってしまうのは、少しもったいないかもしれません。何度も読むと、英語の文が簡単に読めるようになります。でも、「読めること」と「覚えていること」は、少し違います。読めるようになると、つい「もう覚えた」と勘違いしてしまうことがあります。研究では、これを 流暢性錯覚(fluency illusion) と呼びます。

面接の本番では、紙に書いてある文を読みません。その場で、自分の頭で考えて英語の文を作って話します。読んでわかることと、自分で作れることは少し違います。だから、「作る」練習もいっしょにやっておくと安心です。

おすすめの方法が、ふたつあります。どちらも昔からある方法で、研究でも効果が確かめられています。英検3級の絵の問題に合わせて、今日から紙とペンでできる形にしてみました。ぜひ一度、試してみてください。

自由再生:本を閉じて、書く

ひとつ目は 自由再生(free recall) です。

紙とペンを用意します。10分のタイマーをかけます。本やノートを閉じたまま、さっき勉強した内容をできるだけ多く書きます。名前、日付、センテンス、話の展開。何でも書きます。本は見ません。

タイマーが鳴ったら、開いて、見比べます。

わかっていたことと、わかっていると思っていたことの差が見えてきます。思い出す行為そのものが勉強になります。これは心理学で テスト効果(testing effect) と呼ばれています。2017年に、118の研究、約15,000人分のデータがまとめられました。その結果、テスト形式で練習することが、他のどの勉強法よりも効果があるとわかっています。

差の大きさがわかる例があります。ワシントン大学のメアリー・パット・ウェンダーロス先生の授業です。ある範囲の内容は、点数の軽いクイズをたびたび出して確認しました。別の範囲の内容は、3回読み返させました。期末試験の結果は、クイズに出した範囲が平均Aマイナス、読み返した範囲が平均Cプラス。同じ授業の、同じ学生です。違ったのは、脳がやった作業だけでした。

単語の忘れ方は、放置すると急に早くなります。読み返すだけでは追いつきません。

書き直し:自分の文と、上手な人の文を比べる

ふたつ目は 書き直し(reformulation) です。

自分の力で文章を書きます。それから、お手本の文章を読みます。上手な人が書いた完成版です。自分の文章と並べて、どこが同じで、どこが違うかを見ます。

言語教育では、前からある方法です。ある研究では、外国語を学ぶ中学1年生の作文を調べました。お手本と見比べてもらったところ、生徒が自分で直した箇所の80%が正しく直っていました。これは書く練習での研究ですが、比べるところは同じなので、話す練習にも使えます。

話す練習についての研究もあります。先生が言い直してあげるより、生徒が自分で気づいて直すほうが、効果が大きいという結果でした。

なぜ、お手本と比べるのが効くのでしょうか。人は、自分で気づいていない間違いは直せないからです。比べることで、自分の間違いや、足りないところに気づけます。その気づきが、そのまま勉強になります。

これは、良いフラッシュカードの作り方にも共通しています。

やってみる:写真ひとつ、箱4つ

ひとつの写真で、やってみます。

下の写真を見てください。説明を読む前に、見たものを紙に書いてください。5つくらいの短い文。現在形。易しい単語。1つの文に情報は1つだけ。「人」「持っている物・していること」「周りの物」「背景」の順でグループ分けして書いてください。

青いヘルメットをかぶった男の子が赤い自転車に乗って灰色の道を走っている。背景には大きな緑の木と緑の芝生が広がり、上には薄い水色の空。

書いたら、箱をひとつずつ開けてください。開けたら、また閉じてください。次の箱に進みます。

箱1 ―― 人
  1. There is a boy here.
  2. A boy is in the picture.
  3. He is a young boy.
  4. He has a blue helmet.
  5. He has short brown hair.
  6. His face is round.
  7. He has two eyes.
  8. He has a small nose.
  9. He has a small mouth.
  10. He is wearing a blue shirt.
  11. He has dark blue pants.
  12. He is wearing blue shoes.
箱2 ―― していること・持っているもの
  1. The boy is smiling now.
  2. He has a red bike.
  3. The bike has two wheels.
  4. The boy is riding a bike.
  5. He is holding the handlebars.
  6. His hands are on the bike.
  7. His feet are on the pedals.
  8. He is looking straight ahead.
  9. He is looking down the path.
  10. He is riding very well.
  11. The bike is under him.
箱3 ―― 周りの物
  1. The bicycle is bright red.
  2. The wheels are black and gray.
  3. The wheels are big.
  4. There is a green tree.
  5. The tree is on the right.
  6. The tree has green leaves.
  7. The tree has a brown trunk.
  8. There is a gray path.
  9. The boy is on the path.
  10. There is green grass here.
  11. The grass is near the path.
  12. The grass is behind the path.
箱4 ―― 背景
  1. The sky is light blue.
  2. There are no clouds today.
  3. The grass is very green.
  4. There is a big tree.
  5. There is a green field.
  6. The field is behind the boy.
  7. The tree is behind the path.
  8. The path is in front.
  9. The boy is near the tree.
  10. The tree is very big.
  11. There is a shadow under the tree.
  12. The background is very simple.
  13. It is a nice sunny day.

あなたの文は、この例とまったく同じにならないはずです。それでよいのです。比べることによって、何に気づいたか、何を抜かしたか、何を違う言葉で表したかがわかります。閉じた箱があれば、もう一度写真を見る機会になります。

プロンプトを使う前の、ふたつのルール

お手本の文を作るためのプロンプトは、今日から、どのAIチャットでも使えます。

この写真を見て、CEFR A1レベルの英文をできるだけ多く書いてください。

条件:
・1文は5〜8語くらいの短い文にする
・現在形を使う(is / has / are / is ~ing など)
・文法はシンプルに(There is ~ / There are ~ / He is ~ing / She has ~ など)
・難しい単語や抽象的な単語は使わない
・1つの文に情報は1つだけ
・「seem」「probably」「appears to be」など、推測を表す表現は使わない

動詞の使い分け(重要):
・人物の動作・身につけている物を表す動詞は必ず is/are ~ing にする
 (wear, hold, look, stand, sit, smile, point など)
・所有・属性を表す動詞は現在形のままにする
 (have, has, is/are + 色・素材・名詞)

出力形式(重要):
次の4つのグループに分けて、各グループの見出しをつけてから文を書く。

**人物**
(人物の外見・服装についての文)

**動作・持ち物**
(人物がしていること、持っている物についての文)

**周りの物**
(人物の近くにある物についての文)

**背景**
(部屋・天気・遠くの物についての文)

番号は1から通しで続ける(グループごとにリセットしない)。
各グループで、写真から確認できるA1レベルの文をできるだけ多く書く。

最終チェック(各文について):
1. 写真に実際にある情報か(色・持っている物・見ている方向を確認)
2. 文法はA1レベルか
3. 語彙はA1学習者に適切か
4. 自然な英語か
5. 動作・着用動詞は is/are ~ingになっているか(wear→is wearing、hold→is holding、look→is looking など)

この5つを満たさない文は書かない。

このプロンプトには、ふたつのルールがあります。

ひとつ目は 誰が動かすか のルールです。18歳未満の生徒さんは、自分で動かさないでください。保護者の方がプロンプトを動かして、紙に印刷した結果を生徒さんに渡してください。 これは、AIサービスの利用規約で決められています。

ふたつ目は 写真の安全 のルールです。安全な写真は、自分で撮った物や場所の写真、教科書の写真、ストックフォト。使ってはいけない写真は、知り合いの写真、名前が分かる顔、学校のプリント、名前が映り込んでいるものです。チャットに写真を入れるときは、SNSに載せるのと同じです。

紙でやる理由

画面だと、つい見たくなります。白い紙は、見たい気持ちを止めてくれます。紙に書いた自分の文と、ふたを閉じた箱の中の答えを、見比べます。この順番が成り立つのは、紙の上だからです。

英検の面接と、どう合わせるか

英検3級の面接は、5つの質問と英文の音読を合わせて、5分程度です。

最初の3つはカードを使います。短い英文を読み上げる問題(発音や区切りも評価されます)、英文の内容についての質問、それから絵についての質問がふたつ。絵の質問では、これから何をするか(be going to を使います)と、テーブルにいくつあるか(There is / There are を使います)を聞かれます。

3問目が終わると、カードを裏返します。4問目と5問目は、生徒さん自身についての質問です。カードのことではありません。質問の内容は、テストのたびに変わります。

公式のサンプル問題では、「週末は何をして遊ぶのが好きですか」「外国に行ったことがありますか」の2問です。5問目は、「はい」か「いいえ」で答えます。そのあと、答えによって次の質問が変わります。

サンプル問題は、テストのやり方を示すものです。同じ質問が出るとはかぎりません。

1つの答えにつき5点満点です。絵の質問は、一言で答えると点にならない質問です。「Two」だけ答えて「There are two cups」のように文にしないと減点されます。試験会場で、その場で、英語の文を作れるかが見られています。事前に英文を読んだだけでは、本番で出せません。

ふたつの方法は、そのまま使えます。絵を見て、お手本の文を見る前に、まず自分で文を考えてみる。それがひとつ目。印刷したお手本の文と比べる。それがふたつ目。面接の練習をしたいときは、英検対策コースのページを見てください。

2024年の英検の改訂で、3級の筆記試験は変わりました。面接試験の形式は変わっていません。

順番は決まっている

紙、それからプロンプト、それから比べる。この順以外は、うまくいきません。

先にお手本の文を読むと、また「わかったつもり」になります。はじめに書いた流暢性錯覚です。読んだ瞬間に、その文がすべて簡単に見えます。もう知っていると思ってしまい、頭に残りません。この順番でやるから、効果があるのです。

長期的に効かせたいときは、間隔反復のしくみをあわせて使うと、試験の日までの間、覚えたことが残ります。

歴史のこと

この方法は、新しいものではありません。

ベンジャミン・フランクリンが、自分で書いた本の中で同じ方法を書いています。1700年代のアメリカ人で、アメリカ建国の父のひとり、独学で文章を覚えた人、そして発明家でもある人です。10歳くらいで学校をやめました。好きなエッセーを読み、文ごとにひとつふたつキーワードを書きました。それから、自分の言葉で論を組み立て直しました。最後に、自分の文と原文を比べました。4つのステップです。読む、キーワードを書く、組み立てる、比べる。

学校にほとんど行っていない人が、この方法で文章を書けるようになりました。英語が苦手だと感じている生徒さんのための方法です。