英語を20分話しただけで、頭が重くなる。

日本語なら何時間しゃべっても平気なのに、英語だと短時間でぐったりする。そういう話を、教室でよく聞きます。

まず言っておきたいことがあります。これは、あなたの努力が足りないからではありません。理由がちゃんとあります。

頭の作業スペースには、限りがある

人が一度に処理できる量には、はっきりとした限界があります。作業記憶(ワーキングメモリー)と呼ばれるものです。

日本語を話すとき、あなたはこの作業スペースをほとんど使っていません。何を言うか、どの語順にするか、どの単語を選ぶか。考えなくても口が動きます。自動です。

英語はまだそうなっていません。単語を探す。文法を組み立てる。発音を調整する。この一つひとつに、意識的な力を使っています。研究では「制御処理」と呼びます。特に初級から中級のうちは、その負担が大きくなります。

自動と手動の差です。同じ距離を走っても、疲れ方が違います。

日本語のスイッチは、切れない

もう一つ、見えにくい負担があります。

英語を話しているときも、あなたの頭の中の日本語は止まりません。ずっと後ろで動いています。

だから、英語を話すには日本語を抑え込み続ける必要があります。脳がずっとこの仕事をしています。ある研究者は、足首に重りをつけて歩いているようなものだ、と表現しています。

歩けます。ただ、余分に疲れます。

「英語脳」は科学的に存在するかも読んでみてください。

緊張も、同じスペースを使う

適度な緊張は、集中を高めてくれます。これは悪いことではありません。

ただ、限度を超えると逆に働きます。「変なことを言っていないか」「今の文法は合っていたか」という心配は、英語を組み立てるのと同じ作業スペースを使ってしまいます。英語の処理に使えるはずだった分が、心配に取られる形です。

疲れやすい人ほど、この部分が大きいことがあります。

念のため書いておきますが、話すときの緊張は「やる気がない」こととは別のものです。研究でもはっきり区別されています。

これは、ずっと続くものではありません

大事なところです。

二つの言語を持っていること自体が、一生の不利になるわけではありません。最初のうちは考えるのが重くなり、言葉が出てくるのも遅くなります。ただ、脳はこれに慣れていきます。

今感じている重さは、今の状態を表しているだけです。この先ずっと同じではありません。

疲れを減らす4つの方法

ここからは、研究で支持が確認できているものだけを書きます。

1. 単語ではなく、かたまりで覚える

「Can I have …?」「I’d like to …」のような決まった言い回しを、ひとまとまりで覚えます。

こうしておくと、話すときに組み立て直す必要がありません。ひとつの部品として取り出せます。この分だけ、頭の負担が減ります。かたまりをたくさん覚えている人ほどスムーズに話せることが、研究で分かっています。

2. 同じ話を、二回する

一度話した内容を、もう一度話してみてください。

一回目は重い作業です。何を言うか考え、単語を探し、文を組み立てます。二回目は、その中身も単語も文法も、すでに頭の中で準備された状態にあります。空いた分を、言い方や細かい調整に回せます。

同じ話を別の人にもう一度する。前の週に話したことを、次の週にもう一度話す。それだけで違います。

3. 話す前に、少し考える時間をとる

話し始める前に準備の時間をとると、頭がぐっと楽になります。これは研究でもはっきり確かめられています。

完璧な原稿を書く必要はありません。何について話すか、どの単語を使いそうか、頭の中で少し並べておくだけです。

4. 短く切って、間をあける

これが一番実行しやすいところかもしれません。

疲れやすい時期に長く続けるのは向いていません。研究では、60分のような長さは負担が大きすぎるとされています。最初はごく短く切ってください。60秒でもいいですし、10分から20分でもいいです。自分が集中を保てる長さを探してください。

間をあけることも大切です。まとめて詰め込むより、日をあけて何度も触れるほうが、記憶には残ります。ただし「これが正解の間隔」という数字はありません。何を覚えようとしているか、今どのくらいできるか、年齢によっても変わります。

そして、休むこと。頭を休める時間は、もう一度集中するために大切です。疲れたら休んでください。

効果があるとは言えないもの

逆に、よく言われるけれど根拠が弱いものも書いておきます。

聞き流すだけでは足りません。聞くことは土台として欠かせませんが、それだけでは正確に話せるようにはなりません。自分で口に出す練習が必要だと、研究で分かっています。

「脳科学」をうたう速習教材にも注意してください。1日30分で外国語が身につくといった宣伝は、科学的な裏づけがありません。

教室では、どうしているか

私のレッスンは50分ですが、50分ずっと話し続けるわけではありません。聞く、読む、話すを混ぜます。負担が一か所に集中しないようにするためです。

それでも疲れる日はあります。そういう日は、そう言ってください。無理に続けるより、そのほうが結果的に早く進みます。

英語を話すと疲れるのは、あなたが向いていないからではありません。まだ手動だからです。

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